小山医院 三重県熊野市 内科・小児科

三重県熊野市 小山医院

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時世の粧い

木の芽時に

2016年04月28日

春のある日、運転しながら思い返した。人間の身体を構成している細胞は、絶えず入れ替わって新しくなる。細胞は、60-70兆個あるといわれ、1年でほぼ新たになるといわれている。せっせせっせと細胞を入れ替える動物の営みを改めてダイナミックだと思った。

さて、道路沿いに群生して赤い新芽を出しているクスが、フロントガラス越しに視界に入った途端、紅葉だ、と見紛った。木の芽時には、心身の変調をきたすことがあるが、これは単なる錯覚だった。見事な色だ、と思いながら山々を見ると、シイが新芽を噴き出している。新芽に限らず、あちこちには、さまざまな花が満開だ。世の中、サクラ前線がニュースになるように、サクラは春の主役だ。しかし、クスもシイもどっこい、存在感がある。

生きるためであり、生きている証拠である細胞の入れ替えをする動物には、この季節の植物のような視覚に訴える見事さは、ない。見事な分、生きるすべを心得ているのは、動物より植物の方ではないかと愚考しつつ、生きとし生けるものへの畏れを抱く。この季節ならではの感慨である。