小山医院 三重県熊野市 内科・小児科

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時世の粧い

相撲と習慣

2024年03月30日

大相撲春場所で110年ぶりに新入幕優勝を果たした尊富士。その快挙のニュースも一段落したこの頃である。優勝に酔ったからなのか、この数日、テレビをつけても大相撲の中継はなくて、ああ、終わったのだった、とたびたび確認する夕方のひと時である。終わってから、こんな風に後を引くことは、これまでなかったように思う。私には、場所中から存在感の大きな新入幕力士であった。その実力の分析は、専門家に譲る。

さて、力士は仕切りを重ね制限時間になると、呼び出しからタオルを渡されて、顔や身体を拭う。その拭い方は十人十色であり、力士一人一人に特徴があることが一目瞭然である。取り組みが始まって何日目だっただろうか、尊富士のタオルの扱いに目を見張った。彼はタオルを使ったあと、そのタオルを何と、ていねいに二つ折りにし、さらに折って小さくしてから呼び出しに返していたのである。ほとんどの力士は、タオルで拭った後はそそくさと、そして、人によってはぞんざいにというと言い過ぎだが、拭いたまま呼び出しに返して、すぐさま取り組みに集中している。

力士に限らず、ひとは生活の決まりきった行ないを、親からのしつけなどから習得する。彼の「タオル折り」は、しつけられたからなのだろう。何をどうしつけられ、「タオル折り」になったのか、ということはさておき、折ることが勝負に集中する一助となっているが如くの所作なのである。さらに、折るから勝つ、とあり得ないことまで想像した。私は、その習得した過去にも思いを馳せながら、毎日みていたら、あれよあれよという間に、大鵬の新入幕からの連勝記録に並んでしまった。

優勝を決めてからテレビの画面では、青森の実家の祖父が、「ほっぺにチューしたい」と満面の笑顔を振りまいていた。その笑顔と「タオル」とが重なって、家族の皆さんと彼の勝負強さとがさらに重なってみえた。もちろん精進の上での優勝にちがいないものの、育まれた習慣も力士の強さに一役買っていると、私は確信し、「巨人、大鵬、卵焼き」世代には、得も言えない記録を目の当たりにした春場所であった。