小山医院 三重県熊野市 内科・小児科

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時世の粧い

また相撲と野球

2021年11月28日

当世気質なら、スポーツといえばサッカーやスケートボードなどを話題にするやも知れないけれど、目下、私には相撲や野球から目を離せないことが続いている。すなわち、照ノ富士が優勝を決め、ヤクルトが日本シリーズで優勝を決めたのである。

昨日、千秋楽を前にして、全勝の照ノ富士が一敗の阿炎を倒して優勝した。この一番、立ち合いから阿炎の突き押しに劣勢となり、もはやこれまで、というくらい押し込まれた土俵際で、右腕で相手を抱え込んで逆に転がしてしまった。薄氷を踏むような勝利だと思ったのに、優勝インタビューで、「相手の勢いを止めるには、伸ばさないといけない」と言っていた。わかりにくいが、やっと勝てたわけではなかったことだけはわかった。案の定、インタビュアーも理解しにくかったらしくて聞き直していた。また、解説の元横綱稀勢の里の荒磯親方が、帰ってから勉強します、と最後に言っていた。つまり、インタビュアーも荒磯親方も、すぐにわかる話ではなかったことがうかがえる。この一番は、照ノ富士が相手をよく分析し、余裕をもって受けた結果なのだろうと、あとになって思った。そして、そう思ったと同時に、負けそうになるような追い詰められた取り口が、仕組んだ末での過程だったと気がつき、驚きもした。

さて、昨夜は勝てば日本一という試合を延長の末、ヤクルトがオリックスに僅差でものにした。最近は日本シリーズが始まる前に、恒例のように先発投手を発表していた。ところが、ヤクルトの高津監督は、発表することは規則に書かれていないので、自分は発表しないと宣言した。そのことを作戦のうちにすることで、相手チームに与えた影響は大きかったのではないだろうか。勝負の妙は、テレビ観戦していても、そう簡単にわかることではない。しかし、この一事は、勝負へのこだわりを私たちファンにも知らしめることとなった。

夜11時を超えてヤクルトが優勝を決めた。そして、マウンドに集まったチームが、監督を胴上げすると思っていたら、監督は、全員を前に講釈をし始めた。これまでは、歓喜をたたえたまま、マウンド上ですぐさま監督を胴上げするところなのに、何やら様子がちがうのである。頂点に立ち、何を皆に披露したのだろうか。そういえば、最後に抑えたマクガフ投手に、やや長い言葉をかけていた。そして、気がついたら、主力の何人もが涙を流していた。事程左様に、いつもとはちがう優勝光景を深夜遅くまで見せられた。

照ノ富士、高津監督の言葉や振る舞いに、スポーツに要する技と身体に加えた心の存在を意識させられて、テレビ観戦する更なる面白さを教わった気がする。それは、意思、創造、思考を統御する前頭葉の役割が顕在化している、すなわち、心技体のバランスがとれたとき、アスリートにその利益を還元するだけではなく、スポーツ観戦を深く味わうことになるのだと思った。

相撲も野球も年の瀬を控えて、束の間の一区切り。身体を休ませることは、頭脳を休ませることだと思う一日でもあった。