小山医院 三重県熊野市 内科・小児科

三重県熊野市 小山医院

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診療の中で

感染症の変遷

2014年10月20日

10月より法律改正により、水痘ワクチンが定期接種に追加されることとなった。今後は、3歳までの子どもが2回接種することになる。すでにアメリカではワクチンを始めていて、水痘患者が激減したようだ。日本でも、定期接種することによって、水痘に罹ることを減らそうという期待がある。

さて、私は臨床の現場で、最近水痘に罹る子どもが減ったと感じていた。私の感覚だけではなく、何かのニュースでも減っていることを知った。そこで、それが本当なのかどうか、国立感染症研究所のHPで、罹患報告数を調べてみた。

グラフにあるように、やはり、この13年の間に徐々に減っていて、昨年(感染症サーベイランスシステムの速報値)は、2000年の罹患者数に比べて、実に約10万人もの減りようである。水痘と同じ五類に区分けされている他の感染症には、このような傾向はなく、いま深刻な問題である少子化の影響ではなさそうだ。

感染症は、時代とともに変遷してきた。結核、麻疹、ポリオ、日本脳炎などの疾患は、激減していて、10数年前に当院で麻疹を報告したときには、自治体から患者さんの様子を聞かせて欲しい、と連絡があったほどである。いくつかの感染症を克服してきた要因のうち、生活環境がよくなったことは、第一に挙げられると思っている。水質の浄化、ほとんどの家にある冷暖房設備など、この数十年で大きな変化があり、私たちはその恩恵を受けてきた。その結果として、身体の免疫機能にも変化を及ぼし、いくつもの禍福を享受してきたと思われる。花粉症に罹る人が増えたことは、このことと無関係ではないだろう。一方において、日本脳炎のワクチンを接種していないにもかかわらず、自然に抗体が作られている、ということを聞いた。また、麻疹は戦後に年間2万人が亡くなる病気だったが、ワクチンが開発されたときには、すでに100人程度に減っていた。麻疹による死亡者数が減ったことは、ワクチンだけによることではない、ということを示している。

このように、原因は何であれ感染症は変遷していることがわかる。水痘に話を戻すが、罹患者数が減りつつあるなかで、10月よりワクチンが定期接種になったことをどう考えるかが目下の私の課題である。自然減少している水痘に、わざわざワクチンを接種する必要があるだろうか。また、水痘に罹患したことが原因で、後年高齢となったときに、帯状疱疹を患うことがある。人によっては、長く続く神経痛に悩まされる。この悩みは、ワクチンで解消されるのだろうか。これまで、水痘ワクチンの有効率は、あまり良くなかった。2回接種することで、有効率がどこまで上がるのだろうか等など、思いは尽きない。定期接種となったから、それに倣って皆始めよう、ということではなく、一人一人がいくつもの情報を得ながら、ワクチンを打つ、ということを考えて欲しい、と思っている。

ところで、西アフリカで猛威をふるっているエボラ出血熱。すでに何千人も亡くなっていて、欧米でも罹った人がいる。今後どのように拡がっていくのか、大変心配なことである。しかし、欧米と西アフリカとでは、生活環境が全くと言ってもいいほど違っている。欧米の生活環境では、西アフリカほど亡くなる人がいないのではないかと思うのだが、どうか、そうあってほしいと念じている。