診療の中で
後期高齢者
2025年07月05日
後期高齢者となった。医療制度を新たにするために命名された後期高齢者。その言葉の響きに慇懃無礼な差別用語のようだと独り言ちていたのが、ふた昔近くの前の平成20年だったとは。改めて、流れるが如くの時節を思う。あっという間にこの年齢になったと、圧倒的な思いである。
平成20年、後期高齢者医療制度が始まった。これは、75歳以上の人を対象とする心身の特性や生活を踏まえた独立した医療制度である。詳しくは成書にゆずるが、加齢の影響などで持病が増える世代を後期高齢者として、この年度より、その医療を社会で支えることになった。
この2,3年、私個人は、それまでの年齢では、ほとんど縁のなかった複数の診療科で診察を受けるようになった。それが年々増えていまに至っている。当初は、高齢者になると忙しいなどと、半ば冗談ごとのように言っていた。しかし、複数科を受診することは、本当に忙しいことで、もう冗談など言っていられなくなった。
その診療の実態はというと、いまの病態はどういう状態で、どう健康体に影響しているか、選択できる治療はどうなっているか等など、専門科で診療している医師と話が出来るという、これまでにない時間を享受できている。それにしても、各々担当医師は、私の若い頃とはちがって診断機器を大いに駆使している。だから、こちらから聴きこまなくても、私に十分な情報を伝えてくれることが多い。ただし、医師各々のきめ細やかさについては、後日触れられれば触れてみたい。
私の場合、後期高齢者になる前に、このように診察を受ける機会が多くなった。さらに後期高齢者となると、拍車がかかることが予想される。もっと忙しくなるのであり、歳など取っていられなくなる。ボーっとしているんじゃないよ、とチコちゃんに叱られそうで、新たな冗談ごとを言う状況が多くなるかも知れない。
医師と患者は、一対一対応であるが、患者の側からは医師と多対応、複数の医師と接することとなり、大げさに言えば、生活の仕方を変えなければならなくなる。実際に患者となって、私は生活が変わったように思う。そして、患者を体験した医師として、多くの医師との対応を余儀なくされているのが高齢者だということを踏まえて診療に当たることを強く思うようになった。なかなかに忙しいではないかと、後期高齢者になった最初の感想である。